ソプラノ・リコーダーを紹介します。
メーカー:モーレンハウエル
品番 :5122
購入年:2008年
タイプ:バロック
サイズ:ソプラノ C管
材質 :カステロ・ボックスウッド
運指 :モダン・フィンガリング、バロック式
6・7番孔:ダブル・ホール
ピッチ:a’=442Hz
楽器について:
18世紀前半にニュルンベルクで活躍したヤコブ・デンナーの楽器を元にした、モーレンハウエルのデンナー・モデルです。フィリップ・ヤング*1が書いた楽器リスト(1993年)の中にヤコブ・デンナーのソプラノはないので、おそらくモーレンハウエルはいくつかのアルトやテナーなど他の現存する楽器を元に設計したと思われます。
カステロ・ボックスウッドは「比重0.8、温かく、明るい」*2音が出る材質です。全音域、温かく明るい音で、特にG(運指0123)より低い音域はより温かい音色です。
宮地楽器小金井店の在庫選定でこのモデルや、同モデルの材質違いを多数吹いきた印象からは、個体差が少ないです。ヴォイシングは広すぎず、狭すぎず、多くの方にとって吹きやすいと思います。
エピソード:
オランダの音大時代はバロック・タイプのソプラノを持っていませんでした。アンサンブルではルネサンス・タイプの楽器、ソロではガナッシ・タイプと初期バロック・タイプを中心に使っていたためです。卒業演奏会でサンマルティーニのコンチェルトを演奏した時は、バロック・タイプのソプラノをペーター先生が貸してくださいました。
日本でリコーダーの仕事を始めて間もなく、録音のお仕事をいただいた時に木製ソプラノが必要になり、良い音で手頃な価格だったこちらを選びました。ヤマハ銀座本店が改築中のため1丁目の仮店舗だった頃です。現在は①で紹介した斉藤さんの楽器を主に使っていますが、こちらを買ったことで、楽器選定で役立つ知識と経験を得ることができました。
斉藤さんの黄楊とこちらのカステロ・ボックスウッドを比べた場合を説明します。黄楊をオイリングをしながら使った場合、年月と共に音色に艶、響きには深さが出てきます。カステロ・ボックスウッドをオイリングをしながら使った場合、年月と共に音は少し良くなりますが、格段に良くなる感じはありません。比重が小さい材質は価格は手頃ですが、長く使った時の満足感が物足りないと私は思います。楽器の音が良くなっていく過程も楽しみたい場合は比重が大きい楽器を選ぶことをお勧めします。
現在英語版カタログに掲載されているソプラノの中からお勧めの順に2種類ご紹介します。
5129 ヨーロピアン・ボックスウッド (比重 0.95)
5120 ローズウッド (比重 1.05)
*1) Young, Phillip T. : 4900 Historical Woodwind Instruments. London: Tony Bingham, 1993.
*2) モーレンハウエルの英語版カタログより